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Clients:
牛かつRIKI 力示様
自分の店である「とんかつ かつ亭」と壁一枚で隣合わせだった店が空いたので「この壁を破って、一つの調理場で二つの形態の店ができないかな」と考えていたんです。とんかつとは別の店として。で、ちょうどその頃「牛かつ」という言葉を耳にするようになっていて、県外の牛かつ店を何軒か食べ歩きに行ったんです。「牛かつ」って何?ビフテキ?くらいの知識でね(笑)。
牛かつは、牛肉に衣をつけて揚げたもので、レア肉の状態で提供するんです。お客さんはアツアツの石板の上でレアの牛かつをジュ―っと焼きつけ、タレを付けて食べます。
これがまた美味しいんです!こんな風に牛肉を食べる文化があるなんて全然知らなかったので衝撃が走りましたね。そのとき「富山県ではまだ誰もやっていない牛かつ店の先駆者になってやろう」と心に決めました。
うち(とんかつ店)の肉って、実は高級な肉だとかブランド肉だとかは使っていないんです。でも油の温度や揚げる時間など、やり方次第で肉の美味さはグンと高めることができるんです。僕はとんかつを揚げるにあたって、これまで命をかけて技術を磨き実践してきました。その気持ちと同じ気持ちで“肉を美味しく食べるための新しい手法”として、富山に牛かつを広めることを店のコンセプトに掲げました。
富山初の専門店となる店の名前は正直迷いました。そこで知り合いのデザイナーのパドルアンドチャート大谷さんに、店名のつけ方を相談したんです。大谷さんは「何の店か、というのはすぐ見てわからなくてはいけないので『牛かつ』という言葉は絶対に入れた方がいいです。店名には力示君の思いが一番凝縮されていなければならないですからね」と話してくださいました。
また、「『とんかつ かつ亭』のお客さんやオーナーは、力示君の作るとんかつに絶大なる信頼を置いているんです。力示君しかできない技術、その技術を習得するための貪欲さや美味しさへの嗅覚なども力示君にしかないもの。その気概を示すという意味で、力示君自身の名前を入れたらどうですか」とも言われたんです。
それは自分ではまったく思いつかない発想でした。でもそう言ってもらえたことがとても嬉しくて、自分の名前「力示」の「力(リキ)」を入れようと思ったんです。店名は大谷さんのアドバイスをもとに、ストレートな発想で「牛かつRIKI」と名付けました。ローマ字にしたのは『力(りき)』という漢字が、カタカナの「カ」にも見えてしまうので、漢字、ひらがなとのバランスを取るべく、ローマ字を採用したんです。結果的にインパクトが出たなぁと、とても気に入っています。
名前が決まると同時に、ロゴマークの制作も大谷さんに依頼しました。大谷さんは牛かつ店、焼肉店、とんかつ店、しゃぶしゃぶ店など“肉”を扱う店のロゴマークをリサーチして、ロゴの傾向を僕に見せてくれました。筆文字・手書き文字が多い、牛(豚・鶏)などの動物を入れる、赤の落款を押すなど、見せてもらったロゴはどれも既視感のあるものばかり。これと同じように作っても、店の区別がつきにくいなと感じました。
「『牛かつ店の老舗になりたい、先駆者になりたい』という力示君の思いをロゴに反映するには、アート性の高いものより古典的なデザインがいいと思います」と大谷さん。「見ばえよりもシズル感があり、かつ誰の手垢もついていないもの。これは最初に作る人の特権ですから」と、いくつかのロゴ案を出してくださいました。
ロゴのデザインコンセプトは、老舗感。昔ながらの醤油店や酒屋、味噌店などで使われている“帆前掛け”のデザインを参考にしたとのことでした。「店のコンセプトの文字を入れたもの」「力という漢字を入れたもの」「創業年を入れたもの」「舶来品の雰囲気でトレードマーク的な英文を入れたもの」など…考えられる要素をプラスプラスに構成していったものがいくつも並べられました。
フォントや文字のサイズなど、並べてみることでちょっとした違いがわかり、ロゴの見え方も全く異なることもわかりました。
色に関しては、オレンジ×黒だと大手の牛丼屋さんのようだし、赤はラーメン屋さんみたいに見える。茶色はソース系の店にも見えるよね…と、色から感じるイメージで見比べながら、どんどん候補を絞っていったんです。
僕は帆前掛けの染め色に近い紺色が、一番老舗感を感じられる色だと捉えました。そしてロゴの中心には力示の「力」という字を力強く置き、店のコンセプトである「新旨牛肉」という4文字もうまく配置していただいたものがいいと思いました。牛のマークもワンポイントに入れてもらい、ほかでは見ない、このまま帆前掛けにしてもいいようなロゴデザインが完成しました。旧国道沿いにある店なので、このロゴマークがそのまま看板としての役割になることを意識しながら制作したとも聞きました。
ロゴの入ったユニフォームも作ろうと思ったのですが、はじめは単純に「とんかつ かつ亭」のTシャツプリントと同じものでいいかなという感覚でいたんです。でも大谷さんから「ロゴの入ったユニフォームを着て働きたいと思ってもらえるような“リクルート目線”でのユニフォームを考えてみませんか」と提案されたんです。つまり「お客さんが欲しくなるデザインであり、働いている自分がかっこいいなと思えるデザイン」のTシャツを作るということだったんです。
もともと作りたかったロゴ入りのTシャツ選び。これらをリクルート目線で考えるという難題に取り組むべく、大谷さんのすすめで「チームワークアパレル」のカタログを見せてもらいました。帆前掛けに合うTシャツを前提としていたのですが「昔の職人の格好でもあった、腹掛け風のイメージなんてどうですか?」と大谷さんはラグランスリーブのベースボールTシャツを僕に提案してきたんです。
Tシャツ一枚を選ぶだけなのにここまで考えなくても…と最初は思ったのですが、カタログでそのTシャツを見た瞬間「ああ、なるほど。腹掛けに見えなくもないし、かっこいいかも!」と思いました。腹掛けという発想は、老舗感を出すにもいいアイデアだと思いました。そして紺色の袖を持つベースボールTシャツをすぐに採用してもらいました。
また、帆前掛けは男性色が強いという意識もあったので、女性スタッフ用に胸まであるエプロンも選びました。
ユニフォームが届いてすぐにスタッフたちと試着をしたのですが、カラーを統一したことで店の雰囲気も一気にまとまりのあるものになりました。また、エプロンを外した状態でも私服感覚でいられるTシャツは、女性スタッフたちにも好評のようです。パートの女性スタッフのひとりは、子供の送迎の際にもこのTシャツを着ていくと言っていました。「牛かつって何?」と声がかかることもあるようで、“動く看板”的な役割も果たしてくれている気がします(笑)。うちは基本的にボトムスは自由なのですが「何でも合うから、迷わなくていい」とも言っていました。最近ではお客さんから「そのTシャツ売ってよ!」という声も幾度となく聞かれるようになりましたしね。
僕自身は、おしゃれなデザインがとにかく気に入っています。
Tシャツを作るうえで大事にしたコンセプト「お客さんが欲しくなるデザインであり、働いている自分がかっこいいなと思える」がしっかり反映されたことで、オンとオフの切り替えはもちろん、スタッフのやる気、リクルートにも少なからず効果があるものが完成したのだと実感できました。もちろん、販売はお断りしていますよ(笑)。「欲しかったら、一緒に働きましょう」というスタンスで、これからもこのユニフォームを着続けていきたいと思っています。
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